在宅医療とは

多くの方は、愛する家族に見守られ静かに眠るような最期を迎えたいと願っておられるのではないでしょうか。できるだけ苦痛を感じずに…。

そのためには、そのことをしっかりと文書にしておき大切な人に伝えておくことが重要です。本人の意思が分からない時、人工呼吸器や経管栄養などの選択を家族に委ねられた際、家族は延命医療を選ばざるを得ないことになるからです。

それから、希望や意思をよく伝え、理解し共感してくれる「かかりつけ医」持っておくことも大事です。病気がなくても人間はいつか食べられなくなる時が来ます。しかし、このような時には空腹感はありません。むしろ体は軽く 眠るように意識が薄らいでいきます。ここで、必要以上の点滴をするとむくんで苦しくなるだけです。ところが、医師の立場から何もしないで静観することは、確固たる看取りの哲学を持っていないとできません。意思がしっかりしている間に「かかりつけ医」に伝え、それができる関係性を築いておくことが必要です。

癌の場合にはその「かかりつけ医」が緩和ケアにも精通していることが必要です。緩和ケア医療の進歩により、最近では、辛い痛みからはほとんど解放されるようになりましたが、緩和ケア技術の巧拙により、療養生活の質に随分差が生じているからです。

耐え難い「しんどさ」や「息苦しさ」に対しても鎮静(麻酔) をかけて、眠ることで抑えることが在宅でも可能です。これは、安楽死とは全く別物です。鎮静をかけると意思疎通が出来なくなってしまうので、鎮静開始のタイミングを本人、家族ともが受け入れるにはやはり十分な症状コントロール技術(症状が抑えられていれば鎮静の必要はありませんので、もうこれ以上できること納得できること)、鎮静についての十分な情報提供と同意、そして信頼関係の構築がないと難しいのです。

そして基より何よりも見守る人の存在が不可欠で、それには家族や親戚、友人を日ごろから大切にしておかなければなりません。この世のあらゆるものには始りと終わりがあることを自覚しつつ、自己は全てのものとリンクしている事を認識して、周囲に感謝の気持ちを持って生きることに帰結すると私は思います。

土井医院 土井正樹

進行した癌で、治療できないと言われた方へ…。緩和という治療を受けてみませんか?

緩和は治療であるとも言えます。何故かと言いますと、海外の論文で、進行した肺癌の患者さんに緩和ケアをしっかりした群と、治療だけの群に分けて生存率を比べて見た研究があります。その結果、緩和ケアをした群では、明らかに生存率が高いというデータが出ています。痛みなどの苦痛は、免疫系に悪影響を及ぼし、癌の進行を促進させることになりますので、適切な緩和ケアを積極的に受けることをお勧めします。「モルヒネを使うともうおしまい」などという間違った迷信は捨てて下さい。

 

  • 悪性腫瘍(がん)が再発した方、手術できない方
  • 自宅で緩和ケアを希望される方
  • 神経難病・慢性疾患の方
  • 退院が迫り、その後の療養方法が 見つからない方
  • 自宅で療養を望まれる方  など